石兆亭ぶろぐ

福岡県を流れる母なる大河「筑後川」と筑紫平野の屏風にたとえられる耳納連山の麓にある季節の料理と仕出しの店「石兆亭」の日記です。

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(この方々を抜きにしては語れない巨峰物語)

  シリーズでご紹介させていただきます。

〈大井上先生の『栄養周期説』・弟子の越智通重先生)

現在では栽培学の基礎になっている学説ですが、先生が民間学者であった故に当時の日本は
あまり重要視されず、巨峰もその素晴らしさを世に大きく叫ぶほど批判され、農産種苗登録の申請すら
農林省に握りつぶされていたということです。

しかし栄養周期説は米麦の増産に役立てようという農家の人々の大いに支持され
全国で20万人の会員数となり、学校で習うことは違う実践説はまたたくまに広がりました。

〈ついに大井上先生が田主丸に来る〉

昭和23年、田主丸の栄養周期説の会員は大井上先生を招き、稲作を中心に植物が育つ過程と
その栽培技術を必死に学ぶのでした。

しかし大井上先生が田主丸の地を踏んだのは最初であり最後となり
ついに27年に倒れられますが先生の意思を受継いだ弟子たちは日本理農協会を設立しました。

これは、正しい技術の普及を目指した民間の研究団体です。


九州にその拠点となるのが小倉にあって、その農場に田主丸の会員の子弟が研究生として
送り出されるのでした。

その小倉の春永農場に大井上先生の弟子の一人である越智通重氏が技術指導にやってきました。

田主丸の青年上野正実さんと石崎恵俊さんが越智先生の指導を受けることで田主丸の地にも
指導に来られることになりました。


〈出会いは民間の理農協研究所開設まで)  

稲作中心の田主丸の研究会は耳納山麗の砂礫質を生かして富有柿の栽培が行われていて
栄養周期説を本格的に身に付けられた越智先生との出会いは地元農家の栽培技術に一層磨きがかかり
新しい夢を追い求めはじめついに九州理研究所を開設する話となりました。
(民間人による研究所です。)

耳納連山の風景とくったくのない人々は田舎でありながら新しいものを勢いよく受け入れていく気質が
越智先生をまで動かし、先生は田主丸の会員指導にあたる決心をされました。

〈さて、研究所はどこにつくろうか)

田主丸に元禄時代から続く造り酒屋(若竹屋)12代目の林田博行氏は伝統の酒作りに
没頭しながらも新しいもの好きでパイオニア精神に満ちあふれた人でした。



・・・私がこの飲食業について大変影響を受けたのもこの方です。
何もわからない未熟な私を「人生とは」 「ものづくりとは」「人間関係について」とか
学ばせていただきましたが、高齢にかかわらず中学生のように好奇心を抱かれていたのが印象に
のこっていました。
栄養周期説から学ばれた適性肥料のことをしきりに話して下さいました。
会員が相談に行った先は若竹屋12代目さんでした。

「いい酒米をつくるための研究所と農場に土地を貸してほしい」と
相談に行った方が越智先生の弟子となった石崎恵俊さんの父である時春氏です。
博行氏はそのひとことに快諾し、かって乳牛を飼っていた土地を提供されたのです。


      ・・・・ここで触れておかなければならない事実・・・・

(GHQから派遣された教育担当のへスターさん)

太平洋戦争の終戦まもないころ民主主義を理解してもらうためにGHQはジェームス・へスターさんを
田主丸に出向かせます。

青い目の大柄の人を抵抗なく受け入られたのが博行氏です。

(よく聞かされたへスターさんとの会話)
へスターさんに「どうしてアメリカの人は体格がよかとですか?」と質問すると
「牛乳を飲むことですよ。」と聞いた博行氏は子供たちの将来と田主丸の発展のためにと
米軍に依頼して、北海道から牛を導入し山の農場で飼うことになったのです。

「父はああいう人ですから、すぐに叔父と新町の藤田さんというおっちゃまに北海道に行ってもらったんですよ」
と長女の滋子さんはよく私に話されるのです。

〈へスターさんのベットつくり)


今年82才になられる磯野滋子さまは林田博行氏の長女で、当時、浮羽高女の女学生だったそうです。
「母とへスターさんのベットつくりをしたんですよ、敷布団を3枚使いましてね
2枚を重ね、もう1枚を2つの折って端にくっつけるんですよ、それを敷布で包みこんで、出来上がったものを
見てそりゃおどろきましたよ」

耳納連山が我が家の庭となるほどの見晴らしのよい大接間が、亡きご両親、林田博行、春野夫婦が
愛された場所です。
そこで桜餅をいただきながら伺った話です。


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